直線の追い比べで強さ見せたアポロケンタッキー/日本テレビ盃回顧(斎藤修)



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前走帝王賞での5着からきっちり立て直してきたアポロケンタッキー(撮影:武田明彦)
前走帝王賞での5着からきっちり立て直してきたアポロケンタッキー(撮影:武田明彦)
 あらためて触れるまでもないかもしれないが、中央4頭はいずれもGI/JpnIの勝ち馬で、サウンドトゥルーこそ7歳だが、ほか3頭は4歳か5歳でまだまだ将来が期待される馬。対して地方馬は重賞実績がないか、もしくは勝っていても何年も前という馬たち。当然のように中央4頭の勝負となって、地方最先着の5着馬には大差、それも4着馬と5着馬は3秒4もの差がつく結果となった。

 それでもゴール前は中央4頭による見ごたえのある接戦となった。先行争いにはならず、すぐに隊列が決まり、1000m通過が62秒6というゆったりしたペース。中央4頭はいずれも余力を残して直線を向いているため、追い比べとなってどの馬も同じように力を発揮したことで、クビ、3/4、1/2という差の接戦となったのだろう。もう一度レースをすれば、この4頭の順番はどうにでも変わりそうなほどの差だった。

 末脚勝負のサウンドトゥルーが内の2番枠に入り、ほか中央3頭が外枠に固まり、どういう展開になるかと思ったが、やはりサウンドトゥルーは下げて外に持ち出す作戦。前3頭は、枠の順番どおり、モーニン、ケイティブレイブ、アポロケンタッキーという隊列。サウンドトゥルーは、そこまで下げなくてもと思うほど位置取りを下げた。

 まずは勝ったアポロケンタッキーだが、出遅れというほどではないものの、スタートでやや出負。それで気合をつけたらそのまま掛かって行きそうになり、鞍上が手綱を引いて抑える場面があった。4コーナーから直線を向いたところでは、前の2頭をとらえればという競馬。東京大賞典でも、前にいた2頭、コパノリッキーとアウォーディーを射程に入れて差し切ったように、この馬は追い比べになると強い。ゴール前では外からサウンドトゥルーに詰め寄られたが、内のケイティブレイブとゴール前まで競り合ったぶん、最後までしっかり脚を使った。早くに先頭に抜け出していれば差し切られていたかもしれない。

 前走帝王賞での5着はドバイ遠征の反動があったようで、ここできっちり立て直してきた。とはいえこれがまだ目一杯の仕上げではないようで、このあと、秋のダートGI戦線では中心的な存在となりそうだ。山内研二調教師によると、今年はまだ3戦しかしていないことから、レース後の馬の状態次第では、中1週の南部杯を使ってからJBCクラシックという可能性もあるようだ。そうしたローテーション的なことでも今後の上積みが期待できる。

 2着にはクビ差届かずというサウンドトゥルー。スタート後に大きく位置取りを下げたと書いたが、前がゆったり流れていただけに、当然のように早めに前にとりついた。仕掛けていったのは、向正面に入って残り1000mあたりから。そして残り800mのあたりで、あっという間に前3頭の直後につけた。レースの中でもっともラップが落ちたところ(13秒4)で、無理に脚を使ったということはない。大野拓弥騎手も、このあたりでペースが緩むだろうというのはわかっていたと思われる。走破タイムは、勝ったアポロケンタッキーとタイム差なしの1分52秒9で、上り3Fは、アポロケンタッキーの37秒1に対して、サウンドトゥルーは37秒2と、わずかに及ばなかったぶんが最後のクビ差。

 それにしてもサウンドトゥルーは、レースの流れに惑わされず、常に持てる能力を発揮する。昨年の日本テレビ盃はアウォーディーとモーニンの一騎打ちとなって、2着のモーニンから5馬身離されての3着。それでも自身の走破タイムは1分53秒0で、上り37秒3。今年よりそれぞれコンマ1秒ずつ遅かっただけ。この馬自身はまったく同じ質のレースをしている。さらに一昨年の日本テレビ盃はサウンドトゥルーにとっての重賞初制覇だったが、そのときはコパノリッキーとクリソライトが競り合って1000m通過が59秒9というオーバーペース。直線その2頭の脚が上がったところを差し切ったが、サウンドトゥルーの上りは37秒2。前が止まったぶん、ものすごくキレたように見えたが、実は自身の能力をきっちり発揮したというだけ。勝ちきれないレースが多いものの、崩れることもほとんどないのがこの馬の強みだ。

 ケイティブレイブは、前走帝王賞こそ出遅れて直線一気という、これまでにないレースぶりで快勝したが、やはり先行してこそ。白山大賞典、浦和記念、名古屋大賞典を勝ったときのように、逃げるか2番手から早め単独先頭で押し切るというのがこの馬の勝ちパターン。複数頭数の追い比べとなっては分が悪い。

 逃げたモーニンは、最後に競り負けて4着。昨年のこのレースではアウォーディーとの一騎討ちとなって、アウォーディーより2kg重い58kgだったため、負けたのも仕方なかった。しかし今回は他の中央3頭より1kg軽い57kg。しばらく勝ち星から遠ざかっており、最後のひと押しに欠ける印象だ。





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